「ふたつば」のメンバーから寄せられた、胸腺腫・胸腺がんとの向き合い方、治療の経験、そして日々の暮らしについて綴られたメッセージをご紹介します。
M.Cさん(女性・胸腺腫・大阪府・38才)
2005年3月に重症筋無力症を発症し入院した際、CT検査で胸腺腫を指摘されました。ステロイドパルス療法後に胸腺摘出術を受けましたが、手術時には胸腺腫は見つからず、おそらくステロイドで消失したと思われます。その後3年ほどCTフォローを受け、再発が見られないためフォロー終了となりました。
しかし、2016年12月頃から咳が続き、風邪だと思っていましたが、2017年2月頃からみぞおちの痛みと息切れも出てきたため、呼吸器内科を受診。レントゲン検査で左肺が真っ白に写り、緊急で総合病院へ。CT検査の結果、左肺部分に10cm大の腫瘍、心嚢水、両側胸水が判明しました。腫瘍が大きく、左肺が縮んで機能しなくなっていたのです。
2017年3月に入院し、腫瘍が大きすぎるため抗がん剤治療(ADOC療法)を4クール行いました。これが非常によく効き、腫瘍は半分くらいに縮小、心嚢水と胸水も消失し、左肺も元の状態に戻ったため手術となりました。左胸の原発腫瘍を左開胸手術で切除し、同時に数カ所の胸膜播種も切除。1ヶ月後には右開胸手術で、心嚢内播種2カ所、胸膜播種数カ所も切除し、目に見える腫瘍はすべて切除できたと説明を受けました。
抗がん剤治療中には重症筋無力症が悪化し、2クール目と3クール目の間に免疫グロブリン大量点滴静注療法を受け、症状が改善したため抗がん剤治療を続行できました。
2018年6月、CT検査で再発が発覚。心膜播種が2カ所、胸膜播種が1カ所ありました。再び抗がん剤治療(カルボプラチン+アブラキサン)を4クール行い、胸膜播種は消失、心膜播種も半分くらいに縮小しました。その後は経過観察となりました。
2019年4月、CT検査で腫瘍の増大が認められ、治療を再開。再度抗がん剤治療(カルボプラチン+アブラキサン)を4クール行い、心膜播種が半分くらいに縮小しました。その後は経過観察となっています。
今後の治療は、腫瘍の増大が認められたら抗がん剤治療を繰り返すとのことです。心膜播種のため、放射線治療は心臓に当たるため避けたほうが良いと医師に判断されました。キイトルーダの提案もありMSI検査を受けましたが陰性だったため使用できませんでした。今後、より良い薬が出てくることを期待しつつ、抗がん剤治療を頑張っていきたいと思っています。
治療費については、重症筋無力症を合併している胸腺腫のため、特定疾患医療受給者証が使えることで、上限額以上払わずに済んでおり助かっています。
(2019年9月)
C.Mさん(女性・胸腺がん・神奈川県・48才)
病気の自覚症状はまったくありませんでした。今にして思えば、半年ほど前から時折原因不明の高熱が出たり、肩から腕にかけて激しい痛みを覚えることがあったのですが、それが病気と結びつくとは思いませんでした。
2014年11月下旬の人間ドックで、前年にはなかった胸部の影があることが分かり、都内の大学病院を紹介されました。CT検査やPET検査、針生検の結果、胸腺がんと診断され、翌年お正月明けに胸骨正中切開による手術を受けました。胸腺全体と心膜の一部、リンパ節を切除し、病理検査の結果、6cm×4cm×8cmの扁平上皮癌で、周辺臓器への浸潤やリンパ節への転移はなく、ステージIIと診断されました。
退院後、自宅療養中に咳がひどくなり、高熱が出ることもあったため、2月に再入院。手術の際の感染症などが疑われましたが、溜まっていた胸水を抜いて検査したところ、菌は検出されませんでした。心膜切除したところに再建したゴアテックス製人工膜の拒絶反応で炎症が起こったのではないかとのことでした。2週間の治療を経て症状は落ち着き、退院後は順調に回復。4~5月にかけて再発予防の放射線治療(1回2グレイを全25回)を受けた後は、定期的に検査に通いながら、今のところ再発も後遺症もなく元気に過ごしています。念のため再発に備えて近所の緩和ケア科も受診し、いつでも早期緩和ケアを受けられるよう体制を整えています。
(2017年3月)
N.Yさん(女性・胸腺がん・京都府)
2015年1月に胸腺がんの手術を受け、4月に放射線治療を終えました。その時点では、主治医に最善の治療をしていただいたと思っていました。急性期の副作用である食道炎の症状も徐々に収まり、今後の不安感など精神的な変動も体も落ち着いてきた一年少し経った頃、食道に違和感が起こってきました。その違和感が段々とひどくなり、食べ物が日に日に通らなくなってきました。最後は水を飲むのも辛く、常に縄で首を締められているような感じで、背中が痛くて歩くのもつらく、背中を強くさすってもらわないと過ごせないような状態でした。
内視鏡検査の結果は、放射線治療による晩期合併症で食道狭窄を起こしていました。「胃カメラで少し食道に圧をかけたので前よりはましにはなっていると思うが、狭窄を広げるのは危ない」と言われました。とりあえず様子をみていくのが最良で、今は何もできないと言われました。しかし、首から背中が苦しくて、胃は丈夫なため常に空腹の状態。経腸栄養剤も水で薄めないと喉で引っかかる……。食事を摂れないため、ふらふらして、苦しくて最後は座っていることしかできなくなりました。がんは治ったけれど、普通の生活ができないなら生きていたくないと、泣きながら遺書まで書きました。
かかりつけの先生から、最初にがんを診断してもらった先生がいらっしゃる病院を紹介してもらい、入院して食事の管理や食道の状態などを見てもらいながら三週間寄り添っていただきました。そして、ペースト状の食事が摂れるようになり、嚥下痛や苦しさが収まってきた頃退院しました。それからは介護食を利用しながら、圧力鍋で柔らかくした食事などを工夫しながら摂り、毎日過ごしていきました。良いと言われる健康食品も色々と試しました。
一年近く経って、一番ひどい時に比べればずいぶん色々なものが食べられるようになってきました。辛い時期は放射線治療をしたことを悔やみました。「がんは良くなっても生活の質が落ちてしまうなら、たとえ再発したとしても生活の質を落とすことなく生きていけたのではないか」と。副作用に関する情報も少なく、分からないことばかりでした。しかし人間とは本当に勝手なもので、副作用が徐々に収まり食事が摂れてくると、生きていてやっぱりよかったと思い出したのです。二年再発しなかったという事実は、放射線治療が功を奏しているのだと思います。
がん治療は選択の連続です。しかも短期間のうちに自身で選択しなければなりません。胸腺がんなど希少がんは情報も少なく、どうやって進めばいいのか途方に暮れることが多いのです。そして副作用も人によって違います。もう少し副作用について、特に晩期合併症の情報がほしいと思います。
何を選択するのか迷われたときに、少しでも私自身の経験がお役に立てばと思います。
(2017年2月)
T.Wさん(女性・胸腺がん(大細胞神経内分泌癌))
2011年9月12日、倦怠感、食欲不振、発熱、背中の痛み、横になったときの圧迫感があり、内科を受診しました。風邪と診断されましたが、「いつもの風邪と違う」と主張してレントゲン検査を受けたら、胸水貯留がわかり総合病院への紹介状をいただきました。次の日、声がかすれ息切れもするようになり、総合病院で各種検査の結果、病名は告げられず、呼吸器外科のある病院へ紹介状持参で受診するよう勧められ、その日の午後受診。胸腺腫と診断され、翌日から入院しました。
検査の結果、胸水はなくなり、6cm×5cmの腫瘍が4cm×3cmと縮小。腫瘍マーカーシフラの値が30(正常値は3以下)で、胸腺がんの可能性が90%と言われました。
10月5日、胸骨正中切開による手術(拡大胸腺摘出術、所要時間4時間)を受けました。病理検査の結果、胸腺がん(大細胞神経内分泌癌)と確定。主治医からは5年生存率35~37%、産業医からは胸腺がんの中でも悪性度が高いということで放射線治療を勧められましたが、自分自身で術後の治療はしないことを決めました。
術後は、以前と変わらず大家族の家事、フルタイムの仕事を元気にこなしています。検査のため定期的に通院しており、術後から4年半、再発することなく現在に至っています。
手術後から2年間は肉類、揚げ物は一切食べず野菜中心の食生活を送り、野菜ジュースやヨーグルトは毎日摂取しました。3年目からは普通の食生活に戻しています。また、意識して楽しく笑って過ごすようにしています(急がない、焦らない、悩まない、深呼吸をする、大抵の悩みは時間が解決してくれる、考えても答えが出ないことは考えない)。
(2016年5月)
M.Kさん(女性・胸腺腫・52才・秋田県)
2004年9月に重症筋無力症を発症しました。その10年目にして様々な検査をし、胸腺腫が見つかりました。自覚症状はなかったものの、既にステージⅢでした。
すぐに手術はできず、放射線治療後、右横隔膜神経、心膜、右肺切除の手術を行いました。稀な悪性腫瘍と言われ、1ヶ月後の病理検査の結果、胸腺がんと診断されました。肺にがん細胞が認められたため、抗がん剤治療を行いました。2クール後の検査結果は良好で、がん細胞が認められないため、現在は半年に一度の経過観察となっています。
(2016年5月)